翌朝、お仕事に行く葵さんを見送ってからとりあえずお部屋の掃除をさせてもらっていたんだけど、ほとんど手を入れないでいいくらい綺麗だった。となると結局、葵さんが帰って来るまですることが無くてテレビを見たり、お昼寝をしたりして過ごしたんだけど、だんだん葵さんが恋しくなってきた。葵さんを少しでも感じたくて彼と一緒に眠ったベッドでまどろんでいると、玄関の鍵が回った音が遠くから聞こえてくる。ぱっと勢いよく起き上がって玄関まで走って行ったら、私に気づいた葵さんが、優しい笑顔を迎えてくれた。
「葵さん、おかえりなさい!」
「ただいま」
葵さんが両手を広げたから、遠慮なく胸の中に飛び込んだらそのまま頭のてっぺんにキスをもらった。ぎゅーって葵さんの胸に顔を埋めて香りを吸い込んだあと彼を見上げたら、唇にもキスを贈ってくれた。葵さんとのキスは好きだから嬉しくて、気持ちが高揚していた私は葵さんの胸に置いた手を少しだけ握りしめる。
「葵さん……もう一回、してほしい」
葵さんともう一回キスがしたい。そんな意味で彼を見上げると、葵さんが一瞬だけ動きを止めた。そして、薄く開いた唇が私の唇を覆う。今度は触れ合うだけのキスじゃなくて、舌と舌が絡む熱いものだった。まさか舌を入れられると思ってなくて肩を縮めると、下唇を柔く食んだ葵さんがほんの少し息を吸う。
「ごはんにする? お風呂にする? それとも、俺にする?」
「それ、葵さんが言うの?」
「うん、どれがいい?」
二人きりなのに囁き声で会話をするのがなんだか色っぽいやりとりに思える。少し言い淀んだけど、正直に言ってもいいかと問いかければ深い頷きで返ってきた。
「ごはん」
「……ふっ、そっか。ごはんか」
私の答えが面白かったらしく、葵さんが無邪気に笑っている。頬にリップノイズを立てて口づけを落としてくれた葵さんの手を握って、私は続きを口にした。
「そのあと身体を綺麗にしてから……葵さんがいい、です」
「――ん、わかった。じゃあ、一緒にごはんを作ろうか」
「うん!」
葵さんと一緒にリビングに向かったあと彼がスーツから部屋着に着替えるのを待つ。キッチンの前で立っていると葵さんが戻ってきて冷蔵庫を覗き込んだ。彼の頭の中ではすでに今日の献立が出来上がっているみたいで、買い置きしてある材料からてきぱきと選別してキッチンに並べていく。
「今日、昼食はちゃんと食べた?」
「うん。材料を借りてオムライスを作ったんだけど、葵さんみたいに上手に作れなかった」
「もしかして、あの映画のオムライス?」
「そう! 自分で作ったオムライスを食べながら、今度は葵さんが作ってくれたものが食べたいなぁって思った」
こちらを流し目で見つめた葵さんは、にこにこ笑顔を浮かべて週末にオムライスを作る約束をしてくれた。今から週末が楽しみで、葵さんとまた一緒にキッチンに立って料理をすることが嬉しくて自然と鼻歌が漏れていた。上機嫌のままに私は葵さんと再会するまでの状況を彼に話した。
クリスマスの夜、泣きながらタクシーの飛び込んで家まで帰ったこと。家に帰って、葵さんがプレゼントしてくれた香水の意味に気づいたこと。それからずっと葵さんが恋しくて、寝る前にベッドの枕に香水を振りかけて葵さんを思い出しながら眠っていたこと。話せば話すほど胸の奥が、ぎゅっと痛くなって葵さんへの愛しさが増す。ちょっとだけ泣きそうになって、こっそり涙を拭ってしまった。
「このまま引きこもって仕事をしないで過ごすのはダメだって思って、いくつか面接を受けたんだけど全然受からなくて……」
二人で作って完成した料理をテーブルに並べながら話していると、葵さんがお皿を持ったまま動きを止めた。あれ? と思って葵さんの名前を呼ぶと、テーブルにお皿を置いた彼はゆっくりこちらを振り向く。真面目な顔をした葵さんは私との距離を詰めると左手に触れてくる。そして親指で薬指を優しく撫でた。
「俺が君を支えるから、もう何も心配しないでいいよ」
「葵さん……」
「君の幸せが俺の幸せだからね」
ぎゅっと目を閉じたら涙が零れる。葵さんの胸に飛び込んで抱き着いたら、しっかり受け止めてくれて胸が熱くなる。葵さんのぬくもりを感じながら、この人と一緒に幸せになりたいと強く思った。
「葵さん、おかえりなさい!」
「ただいま」
葵さんが両手を広げたから、遠慮なく胸の中に飛び込んだらそのまま頭のてっぺんにキスをもらった。ぎゅーって葵さんの胸に顔を埋めて香りを吸い込んだあと彼を見上げたら、唇にもキスを贈ってくれた。葵さんとのキスは好きだから嬉しくて、気持ちが高揚していた私は葵さんの胸に置いた手を少しだけ握りしめる。
「葵さん……もう一回、してほしい」
葵さんともう一回キスがしたい。そんな意味で彼を見上げると、葵さんが一瞬だけ動きを止めた。そして、薄く開いた唇が私の唇を覆う。今度は触れ合うだけのキスじゃなくて、舌と舌が絡む熱いものだった。まさか舌を入れられると思ってなくて肩を縮めると、下唇を柔く食んだ葵さんがほんの少し息を吸う。
「ごはんにする? お風呂にする? それとも、俺にする?」
「それ、葵さんが言うの?」
「うん、どれがいい?」
二人きりなのに囁き声で会話をするのがなんだか色っぽいやりとりに思える。少し言い淀んだけど、正直に言ってもいいかと問いかければ深い頷きで返ってきた。
「ごはん」
「……ふっ、そっか。ごはんか」
私の答えが面白かったらしく、葵さんが無邪気に笑っている。頬にリップノイズを立てて口づけを落としてくれた葵さんの手を握って、私は続きを口にした。
「そのあと身体を綺麗にしてから……葵さんがいい、です」
「――ん、わかった。じゃあ、一緒にごはんを作ろうか」
「うん!」
葵さんと一緒にリビングに向かったあと彼がスーツから部屋着に着替えるのを待つ。キッチンの前で立っていると葵さんが戻ってきて冷蔵庫を覗き込んだ。彼の頭の中ではすでに今日の献立が出来上がっているみたいで、買い置きしてある材料からてきぱきと選別してキッチンに並べていく。
「今日、昼食はちゃんと食べた?」
「うん。材料を借りてオムライスを作ったんだけど、葵さんみたいに上手に作れなかった」
「もしかして、あの映画のオムライス?」
「そう! 自分で作ったオムライスを食べながら、今度は葵さんが作ってくれたものが食べたいなぁって思った」
こちらを流し目で見つめた葵さんは、にこにこ笑顔を浮かべて週末にオムライスを作る約束をしてくれた。今から週末が楽しみで、葵さんとまた一緒にキッチンに立って料理をすることが嬉しくて自然と鼻歌が漏れていた。上機嫌のままに私は葵さんと再会するまでの状況を彼に話した。
クリスマスの夜、泣きながらタクシーの飛び込んで家まで帰ったこと。家に帰って、葵さんがプレゼントしてくれた香水の意味に気づいたこと。それからずっと葵さんが恋しくて、寝る前にベッドの枕に香水を振りかけて葵さんを思い出しながら眠っていたこと。話せば話すほど胸の奥が、ぎゅっと痛くなって葵さんへの愛しさが増す。ちょっとだけ泣きそうになって、こっそり涙を拭ってしまった。
「このまま引きこもって仕事をしないで過ごすのはダメだって思って、いくつか面接を受けたんだけど全然受からなくて……」
二人で作って完成した料理をテーブルに並べながら話していると、葵さんがお皿を持ったまま動きを止めた。あれ? と思って葵さんの名前を呼ぶと、テーブルにお皿を置いた彼はゆっくりこちらを振り向く。真面目な顔をした葵さんは私との距離を詰めると左手に触れてくる。そして親指で薬指を優しく撫でた。
「俺が君を支えるから、もう何も心配しないでいいよ」
「葵さん……」
「君の幸せが俺の幸せだからね」
ぎゅっと目を閉じたら涙が零れる。葵さんの胸に飛び込んで抱き着いたら、しっかり受け止めてくれて胸が熱くなる。葵さんのぬくもりを感じながら、この人と一緒に幸せになりたいと強く思った。

