夏休み。外は刺されるような猛暑の中、私はエアコンの効いた吹奏楽部の部室にいた。心地よい寒さを肌に感じながら光り輝くトロンボーンを手に取り、冷たいマウスピースを口に当てる。
「穂希(ほまれ)ー!!」
私を呼ぶ馴染みのある元気なその声を聞くとまたかと思いながら振り返る。
「なに?彩花(あやか)」
ハツラツで元気な声と肩までの揺れる茶髪が彩花という人物を物語っていた。
彼女は中学一年生の時に同じクラスになり趣味の共通から仲良くなった友達。そこから一緒の高校を目指し見事合格した親友だ。ハキハキとしていて人当たりがよくてクラスの人気者の彩花。人懐っこく裏表がない性格で私をいつも引っ張ってくれている。そこからなんやかんやあって3年生、今では部長と副部長を任され彼女と私で部活を支えている。
「ここのリズムなにー?」
「えっとね、、」
見かけによらず真面目な彼女はわからないことがあるとすぐ私を呼んで質問をしていた。
説明してやるといつもとびきりの笑顔をぶつけられる。
「ありがとう!やっぱ穂希はすごいね」
そう言う彼女の目は飲み込まれてしまいそうな程に輝いていた。
「そんなことないよ、彩花の方がよっぽどすごいから」
「もー!!穂希ったら優しいんだから!」
本当なんだけどなと思っていることはあえて言わないでおこう。
「てかさ!!この課題曲ムズくない?!意味不すぎ!」
「あはは、前の自由曲よりはマシだよ。」
「いーや!これの方がムズい!マジ無理なんですけどー!」
まさにJKという言葉を使う彼女に対し着いていけないと思うと同時に息を吐くような笑みをこぼす。