「………」


餞別に関しては、誰の目にも触れず、尚且つ氷乃瀬くんの手を煩わせることなく渡せる良い方法が無いか、もう少し検討してみよう。


それから数日間。


思案してみたものの具体的な解決策は浮かばず。


断念しようかとも思ったけれど、奇跡的なタイミングが訪れることを願って餞別品を購入した私。


でも、そんな理想が現実になることはなかった。


女の子たちに話しかけられていたり、そうでない時も遠巻きに鑑賞している女の子たちがいるから、近付くことも難しくて。


氷乃瀬くんと接する機会が得られないまま、無情にも時間だけが過ぎていった。


終業式の日には何とか渡せたらいいな…と思っていたけれど、前日の夜に小学校低学年以来の高熱を出してしまい…


生まれて初めて終業式を欠席するという事態に。


結局、会話を交わしたのはプリントを届けに行った、あの日が最後。


餞別は私の手元に残ったまま。


氷乃瀬くんは、どこかの街へと引っ越して行ってしまった。