あまり先延ばしにするのも悪いし、今日は教室に居てくれるといいけど…。


祈るような気持ちで5組にやって来た私は、教室の出入口のところから教室内を見回す。


けれど、既に氷乃瀬くんの姿はどこにもなかった。


今日もダメか…。


帰ったとみせかけて、まだ校内のどこかに居たりしないかな。


立ち寄りそうな場所で思い当たるのは図書館だけど、今日は司書の藤村先生が出張で不在のため終日休館している。


そのことは、昨日のSHRで各クラスの図書委員が周知することになっていたから、氷乃瀬くんも知っているはずだし。


「栞ちゃん、どうしたの?」


出入口のところで様子を伺っていた私に気付いたらしく、萌絵ちゃんがこちらにやって来た。


「氷乃瀬くんにちょっと話があったんだけど、もう帰っちゃったよね?」


「終礼が終わった途端に教室を出て行ったから、多分帰ったと思うよ」


「そっか…」


急ぎの用事とかかな。


お昼休みや放課後に会えないなら、明日は朝早めに来てみよう。