さっき部室棟のところでチョコをしまい込んだ後、ファスナー閉めるの忘れていたんだ。


何やってるんだ私は。


「大丈夫か?」


一緒に拾おうとしゃがんだ氷乃瀬くんを慌てて制止した。


「平気!一人で対処できるから」


「だけど二人で回収した方が早く……」


途中でピタリと止まった声。


氷乃瀬くんは私の足元に手を伸ばすと、先輩に渡すはずだったチョコの箱を手に取った。


「これ、どうするの?」


「家で食べるよ。お菓子に罪はないから」


「じゃあ、俺も食べていい?実は、ちょっとお腹空いてたんだよね」


「別に構わないけど、これ手作りだよ?」


「早くちょうだい」


今朝は女の子たちの手作りチョコを受取拒否していたのに...。


もしかして、お腹が空きすぎて食べられるものだったら何でもいい的な心境なのかな。


ラッピングを取って小箱を開ける。


笹森先輩が喜んでくれたらいいなと思いながら作ったトリュフチョコ。


氷乃瀬くんは、その中の1個を摘まむと口に放り込んだ。