「そういうエピソードがあるなら、もっと早く教えてくれれば良かったのに!って怒ったりしないんだな」
「仮に話を聞いていたとしても当時の私は絶対に信じなかったと思うから。氷乃瀬くんを責めるのはお門違いでしょ」
「ふーん」
氷乃瀬くんは夕日が差し込む窓の方に視線を逸らした。
怒られると思っていたから拍子抜けしてるんだろうか。
それとも怒られずに済んでホッとしているとか?
無表情だから何を考えているのか分からない。
頭の中に疑問符を浮かべながらココアを口に運ぶ。
半分ほど飲んだところで、教室の時計に目を向けた。
波立っていた感情も落ち着いてきたし、そろそろ帰ろう。
椅子の横に置いていたスクバにペットボトルを入れようとした私だけれど。
「あっ」
肩紐のところに手を引っ掛けてしまい、スクバが倒れて中に入っていたテキストやノートが飛び出してしまった。


