「美味しい…。ココアありがとう」


「陽咲、あのさ……」


帰るのかと思いきや、氷乃瀬くんは私の前の席に座った。


「笹森センパイにはしっかり釘を刺しておいたから今日みたいなことは二度と無いと思う。打算的でクレバーな人だから、自分の不利益になるようなことはしないはずだし」


釘を刺す…か。


そう言えば、私を助けてくれた時の言葉。


『俺も学校で本性を曝すセンパイが見れるとは思っていませんでした。とうとう化けの皮が剥がれましたね』


あんな風に言うってことは…


「ひょっとして、氷乃瀬くんは笹森先輩が本当はああいう人だってことを前々から知ってたの?」


「知ってたよ、中学の頃から。ある日の夜、アイツは隣町の公園で女子から貰った誕生日プレゼントを冷めた顔で踏み潰してたんだ。柄の悪そうな不良たちと一緒に」


「そっか……」


どうして氷乃瀬くんは優しい笹森先輩のことをいつも悪く言うんだろう…って思ってたけど、今回のことで腑に落ちた。


笹森先輩はやめた方がいいって私に忠告したのも、本来の姿を知っていたからだったんだ。