「本当に大丈夫?」
いつになく優しい声で顔を覗き込む氷乃瀬くんコクンと大きく頷いた私は、手に持っていたチョコ入りの箱をスクバの中に突っ込んだ。
「私、教室に忘れ物を取りに行くので、それじゃあ……さようなら」
氷乃瀬くんに深くお辞儀をした後、急ぎ足で教室へと向かう。
自分の席に到着すると、崩れるように座った。
一人になりたくて、嘘ついちゃった。
驚き、ショック、そして怒りや悲しみ。
複数の負の感情が入り交じって心の中がぐちゃぐちゃだ。
初めて購買で会った時に困っていた私を助けてくれた優しさも、自分の好感度を上げるためだったってことだよね。
内心は面倒くさいとかウザいとか思っていたんだろうな。
頭の中で再生される当時の思い出。
次第に目頭が熱くなってきて視界が滲み始める。
私は涙が零れ落ちないように天井を見上げた。
先生が見回りに来るかもしれないし、泣くんだったら自分の部屋に帰ってからにしなきゃ。
目元を指で拭っていた時、教室の扉を開ける音が響いた。


