春待つ彼のシュガーアプローチ


「絶対、誰にも言うなよ」


威圧感のある低い声と睨みつけるような冷たい目。


先ほど先輩が話していた言葉の数々が幻聴でも嘘でもなく、全て現実で事実なんだと思い知らされる。


先輩がこんな人だったなんて…。


ショックや呆れを飛び越えて沸々と怒りが込み上げてきた。


「女の子たちが先輩を想って心を込めて贈ったチョコレートを、受け取るだけ受け取ってそのまま処分だなんて…あんまりだと思います」


「俺のことを想って~とか重いしキモ過ぎ。好きでもない女たちからのチョコなんて俺にとってはゴミ同然なんだよ」


「だったら最初から受け取らなければいいじゃないですか!」


「拒否しろとでも?そんなことしてみろ、地道に築き上げてきた俺の好感度が下がるだろうが」


「えっ…」


「授業態度が良く、おまけに男女問わず生徒からの評判も良ければ教師たちにも好印象、高評価。その方が何かと立ち回りやすくて都合がいいんだよ」


何それ。


「じゃなきゃ、誰にでも優しくなんて出来るわけねーだろ」


他人の気持ちや想いよりも周りからの評価や印象を大事にするんだ…。