春待つ彼のシュガーアプローチ

ところが。


「陽咲さん、本当に急でごめん!」


「ううん、気にしないで」


急用で帰宅することになった女の子から日直を頼まれてしまい、放課後の作業を引き受けることに。


順調に終わるかと思いきや、教卓の上に担任の先生が置き忘れていった書類ケースがあるのを発見してしまった私。


日誌を提出がてら渡そうと思って職員室に行ったものの先生は見当たらず。


化学担当だから理科準備室の方に居るかもしれない…とそちらに行ってみたけれど不在。


暫く探し回った結果、数学準備室で他の先生方と話をしているところを見つけて、ようやく日誌と書類ケースを渡すことが出来たのだ。


「はぁ……」


まさかこんなに時間が掛かるとは。


笹森先輩、さすがに帰っちゃったよね…。


学年末考査まで1週間をきっているから、部活動は停止期間中だし。


チョコ、渡したかったな。


溜め息をつきながら昇降口へと向かっていた時だった。


「さ、笹森先輩!?」


廊下の窓から見える中庭。


大きな紙袋を抱えながら、グラウンドの方向へと走っていく姿を目撃した私は、慌てて先輩を追いかけた。