「う、うん」


「相手は、もしかして笹森先輩?」


「えぇっ!?」


萌絵ちゃんから先輩の名前が飛び出すとは思っていなかった私。


激しく動揺した声と共に肩が大きく跳ね上がった。


「どど、どうして知ってるの?」


「廊下で笹森先輩とすれ違ったり、校内で見かけたりすると目で追ってるから、なんとなくそうかなって。栞ちゃんが管理棟の自販機に行く曜日も先輩がパンを買いに行く日だし」


氷乃瀬くんがバラしたのでは?と一瞬思ったけれど、まさか私の挙動で察知されていたとは。


気取られないように振る舞っていたつもりだったけど見破られてたんだ。


「実は夏頃から好きなんだ、笹森先輩のこと」


「そっか~!勉強もスポーツも堪能で、誰に対しても優しく接してくれる紳士で素敵な先輩だよね!」


萌絵ちゃんの言葉に同意しかなくてコクコクと頷く。


「それじゃあ、お互い頑張ろうね」


「うん」


2人でコツンと拳を軽く突き合わせた。