「その話、全然違うの」
「えっ?」
「私が図書館で課題をやっていたら、いきなり氷乃瀬くんが声をかけてきて、一緒に本を探して欲しいって頼まれたから渋々手伝っただけ」
昨日、本を返却しに来た時に私が居るか確認したのも、何か頼み事を思いついたとかだろう。
「そうだったんだね…。でも氷乃瀬くんが女子に話しかけるなんて凄く珍しいことだよ~!」
「そんなに?女子が苦手なのかなとは思っていたけど、多少は自分から声掛けたりすることもあるんじゃない?」
「うーん、近年は無いかなぁ…。中2の秋頃までは女の子たちとも普通に喋ってたんだけどね。困っている女子生徒がいたら率先して声を掛けたりしてさ。男女問わず誰に対しても優しかったんだよ」
「そういう時期もあったんだ……」
今の氷乃瀬くんからはちょっと想像し難いけど。
「もしかしたら……」
「どうしたの?」
「ううん、何でもない。早く片付け終わらせて一緒に帰ろ!」
萌絵ちゃんが何を言いかけたのか気になったものの、敢えて触れずに見回りを再開した。


