「栞ちゃん、あの…違ってたらごめんね」
周囲に人はいないもののキョロキョロと見回した萌絵ちゃん。
少し躊躇いながらも私の耳元に顔を近付けてきた。
「氷乃瀬くんと友達になった?」
「ううん、ただの同学年の男子だよ」
囁かれた言葉に即座に否定する。
でも、どうしてそう思ったんだろう。
さっきの馬淵くんの情報だけだと、友達かどうかの判断は難しい気が…。
「そ、そっか!実は…栞ちゃんと氷乃瀬くんが、一週間くらい前に図書館で楽しそうに勉強したり調べ物をしていたっていう噂を耳にしたから、もしや…仲良くなったのかなと思って」
「それ、誰から聞いたの?」
「私は吹奏楽部の友達から今日の朝練の時に。でもその子も又聞きって感じだったよ」
「そうなんだ……」
あの日、図書館を利用していた生徒はそれなりにいたから、氷乃瀬くんと一緒に居るところを誰かに見られたこと自体は想定内。
でも、事実を脚色した話が密かに広まっているっぽいのは想定外だ。


