私にとって、図書館は静かな環境で勉強や読書をすることが出来る快適な空間。


カウンター当番の日以外でも頻繁に通うぐらい好きな場所だったのに最近は……。


「栞ちゃん、何か悩み事?」


「え?」


「今日は珍しくソワソワしてたから」


「……何でもないよ!」


2月に入り、久しぶりに萌絵ちゃんと一緒だった放課後のカウンター当番。


閉館後の片付けを始めようとしていた時に不意に聞かれた私は、動揺しながらも出来る限り平静を装った。


不思議がられないように自然に振る舞っていたつもりだったけどダメだったか。


氷乃瀬くんに私の好きな人がバレてしまった、あの日以降。


私は図書館に来るのを避けていた。


もしもバッタリ会ってしまったら、笹森先輩への想いを秘密にする代わりに、また何か頼み事をされるかもしれない。


そう思ったら、放課後を図書館で過ごす楽しさよりも憂鬱な気持ちの方が上回っていたのだ。