「ふーん。あの人、外面だけはいいからね」


「笹森先輩はそんな人じゃないわよ。あの時だって…」


遡ること半年前。


不覚にも少し寝坊をしてしまい、お弁当を作りそびれてしまった私が管理棟1階に初めてお昼ご飯を買いに来た時のこと。


その日はパン屋さんが販売に来ていて、お昼休みに入って間もないのに、たくさんの生徒で賑わっていた。


人混みに揉まれながら、ようやくサンドイッチを手に取ることが出来たものの、今度は会計に苦戦。


買いたいものが決まったら店員さんに声を掛けてお金を払うシステムなんだけど、誰かが会計を済ませると直ぐに別の生徒が声を掛ける…の繰り返し。


なかなか言い出せなくて気長に待とうと思った時。


『おばちゃん、その生徒が終わったら次はこの子の会計をお願い』


背後から私の両肩にポンと手をのせて、代わりに店員さんを呼んでくれたのが笹森先輩だった。


お礼を言うと先輩は優しい笑顔を見せてくれて。


『今日みたいに混んでる日って、声を掛けるタイミング難しいよね』


『俺、いつもパンの日はここに買いに来てるから、困った時は遠慮なく頼ってね』


温かい言葉を掛けてくれた。


あの瞬間。


私は笹森先輩のことを好きになったんだ。