春待つ彼のシュガーアプローチ

「私が薦めるのは、この3冊かな。好みは人それぞれだから、氷乃瀬くんが面白く感じるかどうかは分からないけど」


「ありがと。とりあえず全部借りて読んでみる」


「貸出期間は2週間だから。ちゃんと守ってよね」


氷乃瀬くんに釘をさした後、桜の木が一番よく見える窓際に急いだけれど、既に笹森先輩目当ての女子生徒が群がっていた。


遅かったか。


嬉しそうな表情で窓の外の先輩を静かに眺めている女の子たちを少し羨ましく思いながら座っていた席に戻る。


気を取り直して課題を進めていた、その時。


「相変わらず人気者だね~、あのセンパイ」


嫌みっぽい声が聞こえてきたかと思うと、氷乃瀬くんが何食わぬ顔で目の前の席に座った。


「カウンターに行ったんじゃなかったの?」


「どんな感じの話か気になったから、少しだけ読んでいこうかなと思って。何か文句でも?」


「いいえ」


だったら他の空いている席を利用すればいいのに、なんでわざわざここに戻ってくるのよ。


そんな言葉が思わず口から飛び出しそうになったけれど抑えた。