「あの時、見てたの?」


「俺に対する態度とあからさまに違ってるんだからバレバレ。喋り声しか聞いてなかったとしても分かるレベル」


この前、保健室で笹森先輩と交わしたやり取りの一部始終。


やっぱりカーテンの端から覗いていたんだ。


「私が先輩を…す……好きなことは、誰にも言わないで」


「別にいいけど、陽咲の出方次第かな」


「どういうこと?」


「俺にお願いしたいのなら、俺のお願いも聞いてねってこと」


優しい口調だけど、言い方を変えれば“要求を呑まなければ口外する”ということだよね。


不服だけど、秘密にしてもらうためには交換条件に応じるしかないか…。


「分かったわよ。オススメの本、教えればいいんでしょ?」


「うん」


声が弾んでますけど。


もしかして、この状況を楽しんでる?


氷乃瀬くんをキッと睨んだ後、私が読んで面白いと思った推理小説を何冊か手に取った。