「課題やらないの?」


「後でやるのでご心配なく。それで氷乃瀬くんが探してる本ってどんな内容なの?」


「トリックが凝っていて謎解きもわりと本格的だった。意外な人物が犯人で驚いた記憶がある」


「ということは推理小説か…」


推理ものは人気があるから、この学校の図書室もたくさん取り揃えている。


今の情報だけだと思い当たるものが結構あるからもう少し絞りたいな。


「そのストーリーで他に思い出せることってない?例えばどんな人が登場してたとか」


「中堅刑事と頭脳明晰な元ヤンのフリーライターの二人が主人公だった。あのコンビの掛け合いが絶妙に面白くて」


となると、あの本だ。


私も前に借りて読んだことがあったから直ぐにピンと来た。


確かこっちの本棚の下の方にあったはず。


しゃがんで探していた時だった。


「聞いて聞いて!笹森先輩がそこの桜の木の下にいるらしいよ。友達と楽しそうにお喋りしてるんだって!」


「えっ、ヤバい。向こうの窓なら一番よく見えるよね!?」


ヒソヒソと話しながら本棚脇の通路を女の子たちが足早に通り過ぎて行く。


その会話を耳にした私の心臓はドクンと鳴り響いた。