窓際の空いている席に座って、スクバから教科書とノートとペンケースを取り出す。


まずは数学の授業で出された課題をやって、終わったら気になる本を読もう。


黙々と問題を解いていた時だった。


「そのページの問3、ちょっと難問なんだよね~」


確かに簡単には解けなさそう……って、え?


教科書から視線を上げると、対面の椅子に座って頬杖をついている氷乃瀬くんの姿が目に映る。


「何してるの?」


冷静に小声で訊ねた私だけど、内心は驚きで心拍数が一気に上昇していた。


いつから座ってたんだ、この人!?


図書館は静かに行動するのが基本とはいえ、あまりにも気配が無さすぎでしょ。


「今日は居眠りするために来たわけじゃないよ。読みたい本があるんだけどタイトル忘れたから、一緒に探してくれない?」


「それならカウンターで聞けばいいでしょ。当番の図書委員か司書の藤村先生が相談にのってくれるから」


「俺は陽咲に探してもらいたいんだけど」


どうして私なのよ。


唐突な指名に首を傾げた。