「……どういたしまして」


心境の変化があったのかどうかは定かではないけれど、お礼を言われて嫌な気持ちはしない。


清々しい気持ちでベッド周りの淡いピンク色のカーテンを閉める。


あとは保健室の先生にお任せしよう。


出入り口に向かおうとベッドから離れた時、ドアが静かに開いた。


昇降口まで送って行ったわりには意外と戻って来るのが早いな…。


先生だとばかり思っていた私は、入ってきた人物を目にした途端、心臓が跳ね上がった。


「失礼します。先生、すみませんが……あれ?」


さっ、笹森先輩!!


思わず大きな声を出しそうになってしまい、慌てて両手で口を覆った。


「先生っている?」


キョロキョロと保健室を見回している先輩と同様に私も周囲を見回す。


当たり前だけど、カーテンに囲まれたベッドで寝ている氷乃瀬くんの姿は先輩には見えていない。


他には利用者がいない。


つまり、今の質問は私に投げかけられたということ。


その事実だけで心拍数は一気に上昇してしまった。