「陽咲 栞です」


「何組?」


「2組です」


「へー、そうなんだ。ちなみに俺は5組。よろしくね」


別によろしくするつもりは無いんですが。


というか、氷乃瀬くんって女子と話すのが苦手、もしくは嫌いなんだと思ってたけど違うの?


疑問に感じたのも束の間、氷乃瀬くんは黙り込んでしまった。


もしかしたら、保健室の付き添いを半ば強引に頼んだことに対する罪悪感から、多少はコミュニケーションをとらなくては…という判断に至ったのかもしれない。


嫌なら無理しなくてもいいのに。


気まずい空気を纏いながら、5分ほどで保健室に到着。


楽しいことだったら体感数秒で終わりそうな時間が、やけに長く感じた。


「失礼します」


保健室のドアを開けると、先生はちょうど内線電話で話し中で。


「保護者の方、お見えになったんですね。分かりました、これから行きます」


忙しそうな時に来ちゃったかな…なんて思っていると、受話器を置いた先生が私たちの方に顔を向けた。