「どうしてそう思うの?」


「昨日会った時と比べて心なしか顔色が悪そうに見えるから。具合が良くないのかなと…」


「そっか」


伏し目で何かを考えている氷乃瀬くん。


その様子に困惑していると予鈴が鳴り響いた。


「授業が始まるので、私はこれで」


氷乃瀬くんの手を振りほどこうとしたけれど何故か離してくれない。


「あの、これは一体……」


「それじゃあさ、保健室まで付き添ってよ」


予想外の発言に私の口から思わず「は?」という言葉が漏れた。


「1人で行けるでしょ?」


「足元が少しフラつくから1人だと不安。無理するなって言ったのは図書委員さんだよね」


そう言われると何も言えない。


正直なところ、付き添いが必要なほど具合が悪そうには見えないけれど保健室を勧めたのは私だ。


万が一にも本当によろけたりして転んだりしたら大変だし。


「…分かったわよ」


私は氷乃瀬くんに腕を掴まれたまま歩き始めた。