「誰かと思えば昨日の図書委員さん。盗み聞きだなんてイイ趣味してるんだね」


教室に戻ったとばかり思っていた氷乃瀬くんが壁に凭れながら立っていたのだ。


冷ややかな視線に心臓が嫌な音をたてる。


すぐに隠れたから絶対に気付かれていないと思っていたのに、気付いてたんだ。


「身を潜めていたつもりでもスカートの端が少し見えてたからバレバレだったよ」


穴があったら入りたいくらい恥ずかしい。


「教室に戻りたかっただけで、氷乃瀬くんたちの会話を盗み聞きするつもりはなかったんです。でも、ごめんなさい」


「………」


頭を深く下げたものの沈黙しか返ってこない。


相当怒ってるのかな。


おそるおそる顔を上げた私は眉をひそめた。


あれ?


なんだか氷乃瀬くんの顔色が悪い気がする。


「あ、あの……体調が優れないなら無理せず保健室で休んだ方がいいんじゃないでしょうか?」


一瞬、彼は目を見開いたものの直ぐに無表情へと戻った。


これ以上、干渉しないで欲しいってことかな。


更なる怒りを買わないように私はそろそろ教室に戻ろう。


そそくさと立ち去ろうとした時、氷乃瀬くんに腕を掴まれた。