「その男の子、氷乃瀬くんだよ!」
「萌絵ちゃん、知ってるの?」
「もちろん!氷乃瀬 灯くんって言う男の子でね、実は私…同じ中学だったの。今は同じクラス!」
なるほど、それで容姿を聞いてピンときたのか。
「笹森先輩ほどじゃないけど氷乃瀬くんも女子からの人気高いんだよ~」
「そ、そうなんだ」
正直、男子の人気事情とか興味ないからどうでもいいけど、先輩の名前にはドキッと心臓が反応してしまう。
声にも少し動揺の色が出てしまい、恥ずかしくなってしまった。
「となると、身を隠してたのはかくれんぼじゃなくて女子から逃げてたからなのかも」
「えっ?」
「氷乃瀬くんってちょっと近寄りがたい雰囲気を醸しだしてるから遠巻きに眺めてる女子が多いんだけど、中には積極的な子もいるから」
そこまでしなきゃいけないなんて大変だな。
だからと言って、図書館で居眠りしていいことにはならないけど。
デザートのリンゴを食べようとした時、萌絵ちゃんが何か思い出したかのように“あっ!”と言いながら立ち上がった。


