「それじゃあ俺のこと、いや…お互いのことをもっと知るために、まずはお試しで付き合うところから始めよっか」
………ん?
「最初は友達から…じゃないの?」
「俺たち既に友達みたいな関係だし、だったらいっそのこと仮の恋人同士になってみるのもいいんじゃない?それに相手に見せる一面だって友達と恋人では違うから」
そういうものなんだろうか。
確かに、最終的に付き合うか付き合わないかを決めるわけだから、付き合うということを実際に体験してみるというのもアリなのかもしれない。
「だけど試しに付き合ったとしても、私が断る可能性だってあるんだよ?」
「分かってる。その時はその時」
一応、想定はしているんだ。
そりゃそうだよね。
未来でどちらの選択をするかなんて、私にもまだ分からないことだし。
「でも、そうならないように陽咲のこと絶対に振り向かせてみせるから」
「す、すごい自信だね…」
「というより、それだけ好きってことだよ」
氷乃瀬くんは真っ直ぐな目で私を見つめると、柔らかい表情で微笑んだ。
お互いを知るためのお試し期間。
どんな毎日になるのか未知数だけど、しっかり考えて答えを出そう。
この日。
私は友達という枠を越えて、氷乃瀬くんの仮彼女となった。


