春待つ彼のシュガーアプローチ


「………陽咲」


今、誰かに名前を呼ばれた?
なんだか氷乃瀬くんの声に似ているような気が。


「陽咲?」


いや、似ているとかじゃない。
この声は本人…!


一気に眠気が飛んで目を開ける。


すると、私の前で片膝を立ててしゃがみながら真っ直ぐ見つめている氷乃瀬くんと目が合ってしまい…


驚いてアタフタする私の手から文庫本が滑り落ちた。


「おっと、危ない」


でも、地面に落下するギリギリのところで氷乃瀬くんが受け止めてくれて。


少し心配そうな表情で私に手渡してくれた。


「どうしてこんなところに?もしかして体調悪くて休んでたとか?」


「ち、違うの。氷乃瀬くんと話がしたくて待ってたんだ。本当は学校で声を掛けようと思ったんだけど、なかなかタイミングが難しくて…」


「そうだったんだ…」


「とりあえず話をする前に場所を変えてもいい?西側の改札を出たところに広場があるの」


ここだと電車の発着や人の行き来も多いから落ち着けるところに移動したい。


「うん、分かった」


頷いて立ち上がった氷乃瀬くんは、物憂げな表情を浮かべていた。