「はあ、はあ…」
全速力で走って帰宅した私は、自分の部屋に入るとドアに凭れるようにズルズルと座り込んだ。
氷乃瀬くんは、女の子に対して苦手意識というか嫌悪感を抱いているんじゃなかったの?
だって、好意を寄せる女の子たちが話し掛けても、冷たい反応で誰にも靡かないじゃない。
私と普通に喋ったりするのは、女らしさが欠如しているが故、異性だと思われていないからでしょ?
それなのに…
なんで急に告白なんかしたの?
どうして私なの?
どこが好きなの?
いつから…?
頭の中で疑問を投げても答えが分かるわけもなく。
膝を抱えた私は、唇に人差し指をゆっくり近付けるとツンツンと触れた。
おかしいな、まだ熱い。
こんなところまで鼓動の波が伝わってくる。
「………」
キスなんて私には他人事で、縁のないことだと思っていたのに。
動揺や衝撃、その奥に広がる上手く表現できない気持ち。
色んなものがひしめきあっていて。
早く落ち着きを取り戻したい…と思いながら、うるさい心臓の音を暫く聞いていた。


