「電話、出なくていいの?」
「いい。賢哉だから後でかけ直す」
何か大事な用事があって掛けてきたのかもしれないのに、後回しにして大丈夫なのかな。
「そう言えば、今朝は変な空気にしてごめん」
「誰にだって言いたくないことや触れられたくないことはあるから」
私だってないわけじゃないし。
「むしろ、あれは……“友達なの?”って二人に聞いてしまった私に原因があるわけだし、謝らないといけないのはこっちだよ」
「いや、陽咲は何も悪くないだろ。もちろん賢哉も。故意に出た言葉じゃないことぐらい分かってる」
「俺のせい」
遠くを見つめる目は、どこか悲しそうな色を秘めていて。
今朝のことだけじゃなく、何か別の出来事を重ねているように見えた。
「氷乃瀬くん?」
「悪い、ちょっと考え事してた。それよりも早く食べようぜ。これも美味しそう」
だけど、何事も無かったかのようにベーグルサンドを食べ始めたから…
気に掛けるのは、かえって気に障るかもしれないと思い、いつもどおりの自分でいようと気持ちを切り替えた。


