スカートから伸びる足に、朝一番の冷たい空気がチクチクと突き刺さる。
空は何だかほの暗いし…。
まだ11月だというのに、全くもってけしからん寒さだ。
…ていうか、さっきから妙に視線を感じる気がするのは気のせいか?
教室の窓ガラスに張りつく結露が小さな滴となって滑り落ちるのをぼんやりと眺めていると、後ろからぽんと肩を叩かれる。
振り向くと、いつもの三割くらいは明るいんじゃないかと思われるオーラを携えたクラスメートが、いやらしく口元を上げてふんぞり返るように立っていた。
「聞いたわよぉ」
長いまつげに覆われた瞳が、ニヤリと細まる。
細谷ユキ
大きく開けた胸元に、頼りなさげに太ももを覆うスカート。
これだけしか形容しないとただのイマドキのねぇちゃんだが、まぁ一応、彼女私の親友という位置に存在したりする。
私の隣のイトウ君の席に我が物顔でどっかり座り、微妙な表情をしているであろう私を覗き込んでくる。
「やるじゃんモモ!あんたもなかなか侮れないねー!」
「思い当たる節はばっちりあるけど、一応聞いておく。………何のこと?」
「聞かれ飽きてると思うけど、あたしにも聞かせてよ。………転校生とちゅうしたってマジ?」
興奮したように前のめりになるユキ。
目がマジでちょっと怖い。
「それに!ぎゅーって腕組んで、別れ際にこう、ぽんぽんって頭撫でられて!それからサヨナラのキッス…!きゃあああ!!」
バシバシと机を激打し始めるユキに、小さく溜め息を吐く。
「盛り上がってる所悪いけど、それ、全くの誤解だから。正しくは、肩貸してやって頭はたかれて頭突きかまされた、ね」
どこでどう事実が屈曲していったのかは知らないが、決して!絶対に!ラブロマンスなんぞを繰り広げていたわけではない。
神に誓って、ない!