その日の夜――いつもの時間に深影くんの部屋へ薬を持っていったとき、事件は起きた。
ちゃんとノックして、返事があったから扉を開けたのに。
「あわわっ、なんで服着てないの......⁉︎」
「あー、さっきお風呂から出たところだから」
首にタオルをぶら下げて、濡れた髪をかき上げる仕草が妙に色っぽい上半身裸の深影くんが。
こ、これは目のやり場に困る......!
いつも通り、ベッドのサイドテーブルに薬を置いて、部屋を出ようとしたのに。
「......ね、柑菜。もういくの?」
背後から深影くんが抱きついてきた。
とっさに身動きを封じられて、ロボットみたいに固まる。
「は、早く服着て、薬飲まなきゃ......」
石けんの香りが鼻腔をくすぐって......クラッとする。
それに、顔全体が熱くて、深影くんを近くで感じると心臓がドキドキうるさい。
こんなのぜったいバレたくない......のに。

