結局、深影くんが婚約するって話は、本当かどうかわからないまま。
もし、その話が本当だったら......?
離れたくないって思うのは、わがままなのかな、欲張りなのかな。
「柑菜」
「............」
「かーんな」
「......はっ、深影くん」
ドアップで視界に飛び込んできた深影くんのきれいすぎる顔......って、あれここはエレベーターの中?
「さっきからぼうっとしてる。疲れた?」
「あっ、いや......えっと」
さっきまでパーティー会場にいて、そこからずっと上の空状態で今に至るわけなんだけど。
「今日は俺とひと晩ずっと一緒ね」
ホテルの部屋のカードキーを見せられて、混乱していくわたしの頭の中と、どんどん上昇していくエレベーター。
「ね、柑菜......今夜はたっぷり独占させて」
理性がグラッと揺れた音がした。

