君の手を

………



「先生、雅人くんが!」

「信じられん、こんなことが…」

「バイタル、もう一度チェックします」

「ああ、頼む。だけど、これは機械の誤作動なんかじゃないよ」





………





長い、暗いトンネルをトボトボと裸足で歩いていた私は、自分の進む先にに一筋の光を見つけた。

「あそこに行けば、誰かに会えるのかな」


正直自分の今置かれている状況が分からない。

もう、どうしてこんな所を歩いていたのかさえ思い出せないほど、私は歩き続けていた。


[あの光に向かって!]


どこからか声が聞こえた。聞き覚えのある、懐かしい声。

私はあそこに向かうべきなんだ。

私は歩いた。ただひたすらに。するとどうだろう、今まで真っ暗だったまわりが、きれいな草原に変わっているではないか。


私は自分の向かう先を目を凝らして見た。誰かが立って私を待っていてくれている。


近づいて、私には分かった。誰が私を待っているのかが。


そうだよ、思い出した。私は帰ってきたんだ。


「おかえり、美里」

「ただいま!」

私は手を差し伸べた。彼はそっと私の手を握り返してくれた。


温かい、君の手。


もう離さないで。


私にはここがどこなのか分からないけど、もう、不安などかけらもなくなっていた。


「俺といれば、勇気百倍だろ?」

「そうね!」



暖かい光が二人を包みこんだ。





     (完)