君の手を

「お馬さん!やあやあっ!」

祐太はラッキーの上で大はしゃぎしていた。興奮してラッキーの首や頭をバシバシ叩くので、見ているこっちがヒヤヒヤものだ。

「よかったね」

「うん」

佳祐と私は、祐太を見守りながら肩を寄せあった。

棚橋さんの手綱さばきはまさにプロのそれで、ラッキーは並んで歩く棚橋さんの言うことを実によくきいた。

あれなら祐太を安心して乗せていられる。

「佳祐、私、幸せだった」

「そうか、よかった…」

「佳祐は?」

「ああ。最高に幸せだよ」

佳祐が過去形をあえて使わないで言ったことに、私は気付いた。


「小西先生の説明では、薬が効き始めるのは約24時間後なんだって…」

「効くと、どうなるの?」

「強い眠気が来て、眠ってしまうの」

「あと、どれくらい?」

「三時間くらい」


………

私は、薬を飲むことを選択した。

「私の命は、美里さんに受け継がれていく。そうやって命は永遠に続いていくのよ」


佳祐も黙って頷いてくれた。

………



「佳祐、最後に行きたい所があるの」

「うん」

佳祐にも分かったようだ。


私たちは、牧場を後にした。



向かう先は、私たちの夢の城、『トゥルース』