「祐太、明日何したい?」

三人で川の字になって寝ながら、私は祐太の頭を撫でながら聞いた。

「お馬さんに乗りたい!」

眠そうな顔をした祐太が言った。

「六甲山牧場の話してるのかな?」

佳祐も思い出した。

「明日、連れて行ってもらっていい?」

「うん」


佳祐が祐太の頭を撫でる。祐太は静かに寝息をたてて、満足そうな寝顔を見せ、夢の国へと旅立った。

どうか、健やかに…。祐太、愛してるよ。





「出発!」

キャッキャッと祐太がはしゃいだ。

私たちは車で六甲山牧場へと向かった。

つきあっていた頃、二人でよく来たワインディングロード。

「今日は混んでるね」

「いつもは月曜日に来てたからね」

そっかあ。今日は日曜日。

私たちの通る道は、たくさんの家族づれやカップルの車で渋滞中だ。


みんな、思い出をつくりにいくんだね。


私たちの車は入場料を払って、駐車場へ入った。


「お馬さんどこお?」

祐太が牧場に入るなり辺りをキョロキョロと見始めた。

「ポニーはどっちだったかな?」

「こっちだよ」

記憶のあいまいな佳祐と違い、私はつい最近来たばかりだ。

片桐美里として。

私が行った先には、果たして小さな馬がロープにつながれていた。


私たちは足元を通る羊たちにぶつからないように馬のいる柵に近づいた。