君の手を

「美里さん」

私を呼ぶのは誰？

「美里さん」

私はようやく目を開けることが出来て、私を呼ぶ声の主を探した。

そこには、白いワンピース姿の綺麗な女の人が立っていた。


「あなたは？」

「はじめまして。私は、佐藤真沙子よ」

「はじめまして。片桐美里…です」

この人どこかで会ったことがあるな。私の中の記憶が渦巻く。なかなか思い出せない。


「分からないのは無理もないわ美里さん。あなたはずっと眠っていたのですから」

「眠って…いた？」

「そう。眠りながら、私の事を見ていたの。今もこれは、夢の中よ。あなたはもう何ヵ月も眠っているのよ」


「そんな、私、どうなってしまったんですか？私、手術を受けて、それから…」

佐藤真沙子と名乗った女の人は、無言のまま微笑んだ。とても優しい笑みだった。


……　お別れの時が来たの。私はあなたに、あなたの優しさに出会って、本当に良かった。ありがとう　………


私の意識は、再び暗い闇の底へと沈んでいった。だけど、今度の私は、恐怖ではなく、心に安らぎを覚えていた。





私は雅人の病室で静かに目を覚ました。





覚悟は決まっていた。