「娘が、自殺しました」



その女性は、自分のもう一つの人格が愛していた男性が、その消滅を知って自殺したことを知った。


さらに多くの人の失望を知り、いたたまれなくなった。


[私は、命の恩人を二度も殺したばかりか、その恋人さえも殺してしまったの]

その女性は、重くのしかかった自分の運命に耐え切れず、自ら命を断ったのだった。



[最大限の努力を持って、僕は君を説得する。だけど決して強制はしないよ。人の、自分の意思で生きるという尊厳は、守られなければならない]


小西先生の誠意が私の心に届いた。


自分の意思。


最後は自分で選択しなければならないんだ。





「…さこ、真沙子?」

私はハッとして我に返った。佳祐が心配そうに私の顔を覗き込む。

「大丈夫?」

「うん。ごめんぼーっとしてた。何か言った?」

「いや、僕じゃないよ。祐太が、抱っこしてって」


祐太を見ると半べそをかいていた。

かわいい祐太。

「ごめんごめん。こっちにおいで」

私は祐太を抱き上げた。

「ママ、ワンワン飼いたい。ポメラリアン」

「そうね、ワンワン家で飼おうか、ポメラニアンね」

頭を撫でた。さらさらの髪が気持ちいいな。


「祐太、よい子でパパの言うこと聞くのよ。そしたらワンワンがお家にくるよ」

「やった!よい子にする」

「はーい、よい子ね!祐太は…」


その時私を猛烈な頭痛が襲った。


また始まった。この間幾度となく私を苦しめた頭痛。

運命は、私を見逃してなどくれない。


痛い。こんなに痛いのは初めてだ。意識が薄れていく。


「真沙子?大丈夫か?」


佳祐が私の肩を抱いて揺すっている。

その光景さえもまるで他人事のように、意識が朦朧としていく。


もう、ダメ、なのかな。


お願い神様、もう少しだけ、待ってください。