君の手を

あの日あの時、メールなんかじゃなく、なりふり構わず雅人の後を追っていれば、雅人はこんなひどい目に会うことはなかったに違いない。


「雅人、ごめんね。私のせいで」


私は手を強く握りしめた。


ピピー!雅人のつけている機械から何かの警告音が鳴った。

それを見た小西先生が慌てて計器のチェックに入った。


「信じられん!フラットアウトしていた脳波が復活したぞ!」

小西先生は私の方を見て微笑んだ。

「君が来たのが分かったのかな。奇跡が起きた!」


だが、しばらくして、慌ただしかった雅人の計測機械は再び沈黙した。


「こういう例を見たことがある。これは僅かだが望みがある」

よかった。まだ、可能性があるんだ。

「君がいれば、弟に奇跡が起きるかも知れない。私は、そんな気がするよ」


小西先生は私を見て微笑んだ。


私もいずれ選択しなければならない。

薬を飲むのか、死ぬのか。

雅人のことを考えれば、私は死ぬわけにはいかない。


[ママー!]


かわいい祐太、そして夫の佳祐。これもかけがえのない家族。


気が狂いそう。