「…さとちゃん、美里ちゃん!」

私は誰かに肩をゆさぶられて目を覚ました。


意識を失っていたみたいだ。


ここは…美容院の待ち合い用のソファーだ。

私を起こしてくれたのは、佳祐だった。佳祐は、とても心配そうな表情で私を見つめていた。

「すみません、私…」

「突然、頭が痛いって言ってソファーに座ったかと思ったら、気を失ったんだよ。大丈夫?病院行こうか?」


「大丈夫だと…思います」
実は三日前くらいから、ときどき頭痛がするようになっていた。原因は分からない。疲労か、ストレスか。まあ、そんなところだと思う。

だけど今日のは特にひどく、私は痛みに耐えかねて気を失っていたようだ。

「ほんとすみませんでした。お客さんが皆帰ったあとでよかったです」

「僕が無理させたからだよ。何か悪い病気の前兆かも知れないから、ちゃんと病院に行こう。僕が連れていくから、今から行こう」



大丈夫ですよと言う私の主張は佳祐に無視され、佳祐は時間前に店を閉め、私を車に乗せると、病院へ向かった。

「かかりつけは?」

「近畿労災病院です」

「あ、あそこね」

その病院は佳祐もよく知っているところらしく、佳祐は私のナビなしで病院へと向かい始めた。

「場所知ってるんですね」

「うん。真沙子が、妻が最後にお世話になった病院だからね」

「あっ!?」

「ん?どうしたの?」

佳祐は私が大きな声を出したので、驚いて私の方を見た。


「いえ、何でもないです…」


そうか。手術をここで受けたことは佳祐も知っているんだ。





佳祐は病院の駐車場に車を入れると、私に付き添って一緒に受付まで来てくれた。

私は診察券を受付で渡して、ロビーにあるソファーに腰掛けた。佳祐もとなりに座る。


「もう、大丈夫ですよ。佳祐さんはお家に帰ってください」

「ダメだよ。僕が責任を持って美里ちゃんを家まで送るから」

佳祐の優しさがうれしい反面、私の心の中の不安の影も大きく広がった。



私のいろいろな嘘がバレたら、今までの関係もきっと終わってしまう。


ああ、どうかバレないで。