君の手を

だが、迷いに迷った末に私が発した言葉は、その思いを、胸にしまい込むものだった。

「やだ、佳祐さん。佳祐さんって、オレオレ詐欺にひっかかるタイプだよ」

「はは。そうかもな」

佳祐の笑い声で食卓に漂っていた変な空気はなくなっていた。もくもくとスプーンでオムライスを食べる祐太を見て、あまりの愛らしさに、佳祐と私は目を合わせて、吹き出し笑いをした。



「ママ、どこ行くん?」

祐太の頭を撫でながら、私は玄関で靴を履いた。

「今日は本当にありがとう。夕飯もめちゃくちゃうまかったよ」

祐太を佳祐に引き渡す。またあしたね!と言うと、落ち着いた様子をみせる祐太。

「こちらこそ。楽しかったです。祐太くんをお願いします。また明日朝、ここに来ます」

「何か悪いね。家政婦さんみたいになっちゃって」

「いいえ、いいんです。私、祐太くんが好きですから。何てったってママですから」

私は挨拶をして、家をあとにした。また歩いて駅に向かう。

でも今日は涙は出なかった。祐太の世話ができて、佳祐と食事をして。


決めた。私は美里として、もう一度佳祐とやり直す。
そのせいで例えどんな荒波が私に押し寄せても、私は乗り越えていくんだ。