君の手を

看護士さんが首をかしげた。

「私をお母さんて呼ぶんです。熱のせいかなあ」

私は言い訳をしたあと、体温計を受け取って、これを祐太にあてた。祐太は私がすると、おとなしく検温した。

「フフ。本当の母子みたいね。よかったね祐太くん」

「ママ帰ってきたの。看護士さんもママよろしくね」

「祐太くん、大変だったものね。誰かに甘えたいのね」

看護士さんは事情をよく知っていたので、祐太が淋しさを紛らわすために甘えていると思ったようだった。

そう言う風に映ってくれれば、祐太の言動も変に思われないだろう。


「扁桃腺ですね。子供はくせになるから注意が必要ですね」

大事には至らないということでホッと一息。

早速佳祐に報告した。

「よかった」

「佳祐さんはお店で仕事していて下さい。私今から佳祐さんの家に行って、祐太くんの看病しておきますから」

「いいのかい?もちろんお給料は出すけど、全然仕事と関係ないことで」

「いいんですよ。なんなら家事つきで雇ってくださいな。私、結構やる女ですよ」

「じゃあ、お願いします。今日はなるべく早く帰りますから」

「はい。じゃあ、ご飯作って待ってまーす!」

「え?いいの?」

「はい。任せて!」

電話を切った私は、祐太と二人、タクシーに乗って佳祐の自宅へと向かった。