美容院に着くと、なぜか祐太も一緒に来ていた。待合室のソファーでぐったりしている。

「佳祐さん?」

佳祐は私を見つけると少しホッとした顔を見せた。

「あ、おはよう。実は祐太が朝から熱があって。いや、ひょっとしたら昨日の夜からすでにそうだったのかも知れなくて」

かなり動揺している。男親なら仕方がないか。

「私が病院に連れていきます。心配しないで」

「助かるよ。近くの小児科教えるよ」

「大丈夫ですよ、駅前のお医者さんでしょ?」

佳祐は大きく頷いた。そこが祐太の掛り付けだ。

「じゃあ、行って来ます。あとは心配しないで」

私は祐太を抱っこして、お店を出た。

「車で送るよ」

佳祐が車を回してくれた。
本当は車運転出来るんだけどなあ。でも何かあったら大変だし、ここは佳祐にお願いしよう。

「病院ついたらすぐお店に戻ってくださいね。私たちはタクシーでおうちに帰りますから」

佳祐さんは頷くと、私に自宅の鍵を渡した。



「診察終わったら電話しますね」

「すみません。よろしくお願いします」

佳祐はそう言って店に戻って行った。

待合室で診察の順番待ちをしていると、見覚えのある看護士さんがやってきた。

「祐太くん、どうしたのかな?」

祐太はぐったりしていて、熱があるようだったが、看護士さんを見つけて目を覚ました。

「しんどー」

おとなみたいな口の聞き方。こんなのいつ覚えるのだろう。

私は祐太の頭をそっと撫でた。

「お姉さんと一緒なの?熱計ろうか」

看護士さんが体温計を祐太に向けた。一瞬体を仰け反らした祐太は、私の目を見つめて言った。

「ママにしてもらう!」