「美里ちゃんがいると仕事が何倍もはかどるよ」

佳祐はとても喜んでくれた。

二人で働くと以前のように仕事はできたが、やはり営業は午後3時くらいまでで、そのあとは祐太との時間と佳祐は決めていた。

だから、私のバイトも半日といった感じだ。

「あんまりお給料だせないけど」

フルタイムじゃないからしょうがないのに、佳祐は申し訳なさそうにしていた。

美容院に通い初めて一週間が経った。

まだ夏休みということもあって、あまり気にしていなかったお母さんも、さすがに娘の行動が気になってきたようだった。

「美里、あなた毎日どこに行ってるの?」

来た。いつか言おうと思っていたから、今日は言おう。

「私、バイト始めたの」

「バイト?何の?」

「美容院。昔から知ってる人のところ。その人の記憶だけあって、訪ねていったら、働かないかって言われて」

「あなた自身は大丈夫なの?」

「うん。私、美容師になりたいなあ、て。佳祐も過去のことは聞かないからって、私をアシスタントに使ってくれてるの」

「佳祐?」

いけない。ついつい夫を呼ぶように言ってしまった。

「佳祐さんはお店のオーナーだよ。一人でやってるから助手が必要なんだ」

「まあ、夏休みなんだし、そう言うことなら、あなたの好きにするといいわ」

お母さんは少し考えたあと、私を快く送り出してくれた。

学校辞めたいとは、さすがに言えなかった。それはまた今度言おう。