私はちょっと歩き疲れてたので、部屋に入るなりベッドに倒れこんだ。

私を包む悲しみと、佳祐と祐太に会えた喜びがないまぜになった複雑な私の心。
祐太は私をママと呼んでくれた。


佳祐に本当のことを言ったら、また以前のように暮らせるのではないだろうか。

でも、私は片桐美里。私には私の17年の人生の歴史がある。私が佳祐や祐太の元へ行くと言うこと、それは片桐美里という少女のこの世からの消滅を意味する。

考えただけでも恐ろしい。両親の悲しみは想像すらつかない。


そして、雅人。


私が雅人を愛しているというのもまた真実だ。


罪深い私の魂。


ピロリン♪


私がそんな心の負のスパイラルに落ち込んでいた時、私の携帯は脳天気にメールの到着を告げた。


私は携帯を開けた。


メールは、佳祐からだ。

[今日はありがとう。真沙子も親友が来てくれて喜んでいると思います。ところで、美里さんは今働いていないと言うことですが、よかったらうちのスタッフとして働いてくれませんか?君なら即戦力だし]


私は迷った。今ここで、佳祐とはきっぱり別れるべきではないだろうか。


このまま会い続けて、私に未来はあるの?

[お役に立てるかわかりません。足をひっぱるかも]

正直あいまいな気持ちでメールを返した。それは佳祐にも伝わったようだ。

[すぐにとは言わないよ。ただ君が来ないなら、しばらく他のアシスタントを雇うつもりはない。だからゆっくり考えて。いい返事待ってるよ]

あっさりあきらめるかと思ったら結構粘るな。

なんか焼きもちやいちゃうよ。ちょっと下心でもあるんじゃないの?


でも私は死んでしまったわけだし、佳祐が何を考え、何をしようとも勝手だな。
それに相手はまた私だし。

[よく考えてみます!]

私は精一杯明るい感じでメールを返した。



次の日、私の足は美容院『トゥルース』へ向かっていた。

昨日は結局眠れずに今朝までずっと起きていた。
そして、悩んだ末の私の答えがこれだ。


…佳祐と、祐太とともにいたい…


だがそれは、私にとって、波乱の幕開けとなった。