私はリングを指から外してよく見てみた。

あれ?裏っかわに何か書いてある。私はその小さな字を、目を凝らして読んだ。

(MISATO&MASATO)


「美里と雅人って、ローマ字だと一文字しか違わないんだぜ、すごいだろ?」

確かにそうだ。初めて気が付いた。

「勇気百倍だろ?」

出た!雅人の口癖。なんかおっさん臭い言いまわしだが、雅人はこれが大のお気に入りだった。


「うん!勇気百倍!」



…あれが最後になるのなら、もっともっと気持ちを伝えればよかった……。



二日後、手術を受けるため私は麻酔で深い眠りについた。

私の魂は、暗闇を彷徨い歩き、暗いトンネルの中で行き場を無くした。

…こんなの嫌だ。私はまだ死にたくない…



死にたくない。