「じゃあ、祐太お家帰るよ、おばあちゃんにバイバイして」

佳祐に手を引かれた祐太は振り返ってお母さんにバイバイと空いている方の手で挨拶した。

「祐太車乗るぞ」

佳祐にそう言われた祐太はチャイルドシートを嫌がってクズッた。

「ほら、よい子にしてね。祐太よい子でしょ?」

私があやすと祐太は喜んでチャイルドシートに座った。

「よい子!だからママ帰ってきた!」

祐太は車中、ずっと私に話し掛けていた。それはまるで今まで会えなかった淋しさが爆発したかのようだった。

「ママ、ニンジン食べれるよ!よい子でしょ?」

「ホント?すごいね祐太よい子だね!」

「うん!よい子!だから、ママ、もうどこにも行かないでね」

「祐太、その人はママじゃないよ」

祐太は佳祐の方を見て、首をかしげた。

「ママだよ。パパ、ママが分からないの?」

佳祐が今度は首をかしげた。

「どうしたんだろう。祐太はあなたを母親だと思って疑わないみたいです。そんなに似てないのになあ」


ひょっとして、祐太には私の本当の心が分かるのだろうか。それとも、母恋しさゆえの幼児のワガママ?

どちらにしても、祐太は母の愛に飢えている。

「すみませんね、すっかり祐太がなついてしまったみたいで。この子いつもはすごく人見知りするんですけど、君は特別みたいだ」


「いいですよ、私、子供大好きですから」

「ママ、ご飯作ってー」

「何がいいのかな?」

「ひよこラーメン!」

「佳祐さん、ちゃんとご飯作ってあげてますかあ?」

「いやあ。子供は正直だなあ。実のところ、インスタントとかが多くて」

まあ、男手ひとつじゃ、仕方がないかも知れないな。