「お待たせ、じゃあ、行きましょう」

私たちは、店の近くに借りている駐車場へ向かった。

見覚えのある車。後部座席にはチャイルドシート。

私たちは車に乗り、佳祐の実家に向かった。

実家は車で5分くらいの所にある。車に乗ってあっと言う間に到着。


車が到着した物音で、家の扉が開いて、佳祐のお母さんと、そして祐太が出てきた。

「パパ!」

「おう!祐太!よい子にしていたか?」

祐太!元気そう。佳祐に抱っこされてごきげんの祐太。元気そうでなにより。


…私の祐太、大好き!…



「あーっ!ママー!ママー!」

祐太は私を見た途端、そう叫びだした。困惑する佳祐と佳祐のお母さん。

「こちらは真沙子の友人で片桐美里さん。今日お店にカットに来てくれたんだ。せっかくだからお線香あげてもらおうと思って」

「そうなの。わざわざすみませんね。真沙子さんもきっと喜ぶわ」

生前親しくさせてもらった佳祐のお母さん。自分の両親は早くに亡くなったていたので、佳祐の両親は私を本当の家族のように扱い、接してくれていた。

少しやつれたかな。私のせいだろう。きっと息子の心配をいつもしているのだろう。

「ママ、おかえりー!」

祐太は私をママだと言って聞かなかった。

「祐太くんは、淋しいのかなあ?じゃあ、今日だけはお姉さんがお母さんになってあげるよー!」

祐太はそれを聞いてニッコリと笑った。

「ママ!ワンワンおった」

ワンワン。その時家の中から犬の鳴き声が聞こえた。

「犬を飼い始めたの?」

私は佳祐に聞いた。前は実家に犬などいなかった。

「あ、違うよ、妹夫婦が旅行に行ってるから、預かってるんだ」

「あ、ポメラニアンのマミちゃんね」

「ポメラリアンだー」

「もう、ポメラニアンでしょ!何でいつもポメラリアンて言うのかしら?」


「このお嬢さん、ホントに真沙子さんと親しかったんだね」

お母さんが私を優しい目で見た。

そうか。あんまり私の記憶にしかないことを言うのはマズい感じだな。