「へえ、偶然ね。まあ、仲良しだったら雰囲気が似ていても不思議はないかもね。ひょっとしてあなたも真沙子ちゃんのお店に行くの?」
「あ、は、はい」
「あらそうなの。じゃあ一緒に行きましょう。私もね、今日カットしてもらおうと思ってるの」
私はその時気付いた。もしかして、井本さん…。
「予約はされて来ましたか?」
私の問いに井本さんは予想通りの返答をした。
「いいえ。でもね、彼女にメールはしたわ。私はそれでいつも受け付けたことにしてくれるの」
やっぱり……。
井本さんは、私が死んだのを知らない……。
「あなたは予約は?」
「あ、してます」
「そう。じゃあ行きましょう」
井本さんはそう言うとお店に入っていった。
「あ、あああ……」
井本さんは店内で大声を出して泣き崩れた。小さな背中がもっと小さく、丸くなる。その体は、佳祐から聞かされた恐ろしい事実を受け入れたくないとばかりに、小刻みに震えていた。
井本さんは店のホームページなど見ない。彼女は、まだ私が駆け出しの頃から、つまり私たち夫婦が独立する前の勤め先の頃から、ずっと私を応援してくれていたおばあちゃんだった。
だから、井本さんだけは、いつも電話で特別予約。カットや仕上げもすべて私任せ。
そんな井本さんに、私が死んだという情報は、伝わるすべがなかった。
「そんなことって…真沙子ちゃん、前に来たときは元気だったのに。いつ亡くなったの?」
「井本さんが最後のお客さんになりました。あの夜、急に。急性くも膜下出血でした」
「そう」
佳祐の言葉を聞いた井本さんは、力なくうつむいた。赤の他人の死をこれほど悲しんでくれるとは。私は井本さんを見ているのが辛くなった。
「お友達さんは知っていたの?」
井本さんは私の方を見て言った。私は黙って頷いた。
「君はもしかして、美里さん?」
佳祐が私を見て聞いた。私は佳祐を見て、頷いた。
……佳祐。私の佳祐。久しぶりだね……
「あ、は、はい」
「あらそうなの。じゃあ一緒に行きましょう。私もね、今日カットしてもらおうと思ってるの」
私はその時気付いた。もしかして、井本さん…。
「予約はされて来ましたか?」
私の問いに井本さんは予想通りの返答をした。
「いいえ。でもね、彼女にメールはしたわ。私はそれでいつも受け付けたことにしてくれるの」
やっぱり……。
井本さんは、私が死んだのを知らない……。
「あなたは予約は?」
「あ、してます」
「そう。じゃあ行きましょう」
井本さんはそう言うとお店に入っていった。
「あ、あああ……」
井本さんは店内で大声を出して泣き崩れた。小さな背中がもっと小さく、丸くなる。その体は、佳祐から聞かされた恐ろしい事実を受け入れたくないとばかりに、小刻みに震えていた。
井本さんは店のホームページなど見ない。彼女は、まだ私が駆け出しの頃から、つまり私たち夫婦が独立する前の勤め先の頃から、ずっと私を応援してくれていたおばあちゃんだった。
だから、井本さんだけは、いつも電話で特別予約。カットや仕上げもすべて私任せ。
そんな井本さんに、私が死んだという情報は、伝わるすべがなかった。
「そんなことって…真沙子ちゃん、前に来たときは元気だったのに。いつ亡くなったの?」
「井本さんが最後のお客さんになりました。あの夜、急に。急性くも膜下出血でした」
「そう」
佳祐の言葉を聞いた井本さんは、力なくうつむいた。赤の他人の死をこれほど悲しんでくれるとは。私は井本さんを見ているのが辛くなった。
「お友達さんは知っていたの?」
井本さんは私の方を見て言った。私は黙って頷いた。
「君はもしかして、美里さん?」
佳祐が私を見て聞いた。私は佳祐を見て、頷いた。
……佳祐。私の佳祐。久しぶりだね……

