「ドナーが現れました。このチャンスに移植手術をしましょう。日本では、これを逃すと、次にまた機会が巡って来るという保証は全くないですから」

主治医の先生の言うとおりだろう。

私は片桐美里17歳。高校三年生。今私は進行性の心臓病にかかって入院している。

原発性の心臓疾患。

原発性とは原因不明という意味だ。

発症してからも、普通に生活が送れていたが、三年生の一学期になって体調を崩した。

呼吸が、とてもし辛い。先生は私を診察したのち、真剣な面持ちで話した。

「はっきり言って危険です。症状が進行しています」

心臓移植しか残された道はない。先生の言葉には、有無を言わせぬほどの迫力があった。私は移植を決意した。


翌日、私の病室をひとりの男子が訪れた。

「美里、体調はどう?」

彼は私の恋人、雅人だ。

「うん。今日はダルいだけ、かな」

最近体がダルいのが、私の日常だ。

「手術、するんだろ?」

雅人が心配そうに聞いた。
「うん。そのつもり。ドナーは今脳死状態なので、少し時間があるけど、もう今日、明日中に返事しないといけないんだ」

「新学期は一緒に学校行くぞ!がんばれ美里!」

雅人の励ましはとても心強い。

「元気が出るようにいいものやるよ!」

雅人はそう言うともってきた小さなカバンから、もっと小さな小箱を取り出した。

ジュエリーボックス?

雅人はその小箱を私に見えるようにしてそうっと開けた。

その中にあったのは、大小二つのシルバーリング。

「俺とお前のさ!」

雅人は小さい方のリングを箱から出して、これを私の左手の薬指にはめてくれた。

嬉しくて涙が出た。

「あれ?怒った?いきなり左手はまずかったかな」

もう、全然分かってないよ!

私は雅人の手をとって雅人の体を引き寄せ、キスをした。

「ありがとう!めっちゃ嬉しいよ!」

「よかった!」

雅人は一安心といった感じで椅子に座った。

私は左手の薬指に光るシルバーリングを、手をかざしてよく見てみた。シンプルだけど、かわいいツイストタイプのリング。もちろん雅人のとお揃いのペアリングだ。