私はホームページをよく見返した。

そしてその中にブログを見つけた。

最終の書き込みはちょうど一ヶ月前だ。私はブログに入ってみた。

[告別式にご参列いただいたみなさま、誠にありがとうございました。妻、真沙子もきっと喜んでいることでしょう]

[祐太と二人、生きていかなければなりません]

[そのためにも、出来る限りの早期営業再開をめざしたいと思います]


[生前、妻の真沙子は…]

[私が愛した真沙子…]


[真沙子…真沙子…]


「いやあっ!!やめて!」

私の中の『真沙子』が騒めき出した。


…佳祐、私はここにいるよ。祐太、お母さんよ…


こんなことって…一体私に何が起こっているのだろう。私の記憶は実在した女性のものだった。



私は自分の気持ちの整理もつかないまま、パソコンを切った。

私は携帯を手に取った。自分が今からとろうとしている恐ろしい行動に自ら戦慄を覚える。

私の記憶の中にある佳祐の携帯番号。私の指がそれをダイヤルしていく。

入力し終えて、あとは通話ボタンを押すだけ。

佳祐、祐太…



私は怖くなって、電話をかけることなくディスプレイの番号を消した。

電話がつながって、その後何て言えばいいの?

私は佐藤真沙子ではないんだ。私は、片桐美里…



それでも自分の衝動を抑えきれない私は、覚えていた佳祐のメアドにメールを送った。

[早く元気になってください。それを真沙子さんも望んでいます]



もちろん返事など来ない。私は携帯を閉じ、これをベッドに放り投げた。

それに続いて自分自身もベッドに倒れこむ。

どうすればいいのだろう。