「祐太が小さい内は、佳祐一人じゃ生活できないわ」

「だからなんで」

「今、私、自分が死ぬ夢を見たの。あなたと祐太を残して」

「それでか」

「私、臓器提供の意思表示をしているでしょう。なぜだか知ってる?」

「そう言えば聞いたことなかったな。正直ピンとこなかったしね」

私の横で祐太が寝返りをうった。

「私は小さい頃、生体肝臓移植で命を助けてもらったの。わき腹に小さな傷痕があるでしょう?あれはその跡なの」

「そうだったのか」

「だから、私に何かあったら、この体を誰かの役に立てて欲しいの。そうやって、私の命はどこかへつながっていくの」

「わかったよ。でも健康には気を付けてね」

「はーい。私は大丈夫だと思うよ、祐太を残してなんかいけないしね。佳祐も体に気を付けてね」

佳祐は黙って頷いた。

二人の間で幸せそうにニコリと微笑む祐太。

「何か楽しい夢見てるのかな」

「じゃあ、僕たちも楽しい夢でもみるか」

「うん!じゃあおやすみ。いい夢みてね」

「真沙子もね」

私たちは祐太を挟んで互いに手をつないだ。佳祐の温もりはいつも私を安心させる。

この幸せが、いつまでも続きますように……





私は病室で静かに目を覚ました。